理系大学生の備忘録

数学、物理、プログラミングe.t.c

§2 解析学の出発点

今回は解析学の基本となる実数の連続性についての説明となる。

まずはDedekindの公理から見ていこう。

 

公理2.1(Dedekind)

実数の部分集合A⊂Rが次の二つの条件を満たすとする。

(D1)A≠Φ、A≠R

(D2)a∈Aであれば∀b>aに対してb∈A

⇒∃α∈A s.t. A=[α, +∞) or A=(α, +∞)

 

この公理を認めると定理1.1(§1)を証明できる。

↓↓定理1.1はこちら

 

rikei-daigakusei.hatenablog.com

 

 

Proof of Th1.1

{a(n)}はTh1.1の条件(1)(2)を満たすとする。

(Step1)A:={x∈R : a(n)<=x(∀n∈N)}とおいてAが公理2.1の条件(D1)(D2)を満たすことを示す。

(D1)Th1.1の条件(2)よりa(n)<=M(∀n∈N)だからM∈A。よってA≠Φ

a(1)-1AなのでA≠R

(D2)a∈Aであればa(n)<=a(∀n∈N)を満たすので∀b>aに対してa(n)<=bが成り立つ。よってb∈A

 

以上から公理2.1より∃α∈s.t. A=[α, +∞) or A=(α,+∞)

 

A=(α,+∞)とすると、αAなので∃m∈N s.t. a(m)>α。この時α<β<a(m)を満たすβもβ∉Aとなる。これはA=(α,+∞)であることに矛盾。従って、A=[α,+∞)

 

(Step2)lim(n→∞)a(n)=αの証明

示すべきことは「∀ε>0,∃n(0)∈Ns.t. α-ε<a(n)<α+ε(∀n>=n(0))」

(右の不等式)a(n)<α+εはα∈Aより明らか

(左の不等式)α-ε<αとA=[α,+∞)より明らかにα-ε∉A、つまりAの定義からあるn(0)∈Nが存在してa(n(0))>α-εとなる。Th1.1(1)より∀n>n(0)でa(n)>=a(n(0))>α-ε

以上から∀n>n(0)でα-ε<a(n)<α+εとなるので収束が示された。(Q.E.D)

 

Def2.2

X⊂Rとする

(1)a∈RがXの上界(下界)であることを∀x∈Xに対してx<=a(x>=a)と定める。

(i.e. X⊂(-∞,a](X⊂[a,∞)))

(2)Xが上に有界(下に有界)であることをあるM∈Rが存在してMはXの上界(下界)と定める

 

Th2.3(ワイエルシュトラスの上限定理)

X⊂RでX≠Φとする

Xが上に有界(下に有界)ならば∃α∈Rに対して、{a∈R:aはXの上界}=[α,∞)({a∈R:aはXの下界})が成立する

このαのことをXの上限(下限)といいα=supX(α=infX)と表す

 

Proof of Th2.3

Proof of Th1.1の(Step1)でA:={a∈R:aはXの上界}とすれば良い(Q.E.D)

この部分の証明は後日更新した際に記入します

 

ワイエルシュトラスの上限定理は上階の最小値(下界の最大値)が存在することを示している

上限(sup)の値は最大(max)の代わりに用いる

ワイエルシュトラスの上限定理は標語的には「上に有界な集合は上限を持つ」

X⊂Rが上に有界でない場合はsupX=+∞と定める

X⊂Rが下に有界でない場合はinfX=-∞と定める

 

Proof of Th1.1⇒公理2.1

公理2.1の条件(D1),(D2)を満たす集合Aに対してx(1)∉A,y(1)∈Aただしx(1)<y(1)とする。このようなx(1),y(1)が存在することは、公理2.1の条件(D1),(D2)より明らか。

このとき次の手続きに従ってx(2),y(2),x(3),y(3),....を帰納的に定める。

x(n)∉A,y(n)∈Aを定めた際、次のステップ(n+1)では、

(x(n)+y(n))/2∈Aならばx(n+1):=x(n),y(n+1):=(x(n)+y(n))/2

(x(n)+y(n))/2Aならばx(n+1):=(x(n)+y(n))/2,y(n+1):=y(n)

とすると、x(n+1)∉A,y(n+1)∈Aとなる。

従って{x(n)},{y(n)}の作り方から、∀n∈Nに対して、x(n)∉A,y(n)∈A,x(n)<=x(n+1),y(n)>=y(n+1)

|x(n)-y(n)|=|x(1)-y(1)|/2^(n-1) ・・・(✳︎)

を満たしている。

{x(n)},{y(n)}の単調性と有界性からTh1.1より∃α=lim(n→∞)x(n), ∃β=lim(n→∞)y(n)

さらに(✳︎)より、α=βであることがわかる。示すべきことはA=[α,∞)orA=(α,∞)であり、これは(p)(q)を示せば良い。

(p)x についてα<x⇒x∈A

(q)xについてx<α⇒x∉A

 

(p)は公理2.1の条件(D2)より明らか

(q)は背理法で示す。x<αとなるxでx∈Aとなるものが存在すると仮定。{x(n)}は(✳︎)よりx(1)<=x(2)<=...<=x(n)<=...αであり、x(n)→α(n→∞)従って、x<αを考慮すると、十分大きなm∈Nに対してx<=x(m)<αである。ここで{x(n)}の作り方からx(m)∉Aとなっている。一方で背理法の仮定x∈Aとx<=x(m)から公理2.1の条件(D2)よりx(m)∈Aとなり矛盾。(Q.E.D)

 

Th1.1、公理2.1、Th2.3は全て同値なのでどれを公理として出発しても、他は定理として出てくる。

 

区間縮小法

I(n)=[a,b],I(n)⊃I(n+1)(∀n∈N),lim(n→∞)(b(n)-a(n))=0

⇒∩(n=1→∞)I(n)={一点}

も同値な命題の一つ。

 

(補足)上限の言い換え

X⊂Rは上に有界でX≠φとする。

この時次の同値関係が成立する。

α=supX ⇔ ∀ε>0, ∃x∈X s.t. α-ε<x<=α かつ x<=α(∀x∈X)

 

 

 

微分積分学 §1 数列の収束

今日は微分積分§1数列の収束をする。

高校までは「収束する」「発散する」などを乱用してきたが、それらには曖昧性がかなりある。例えばよく「極限値が存在する」などというが、厳密な意味で存在すると言っているのだろうか。まず「収束する」とはどういうことかを厳密に定義できていないのではないか。大学での微分積分ではまず高校まで曖昧にしていた部分を厳密に示し(ε-δ論方)、新たな手法や概念(テイラー展開、広義積分)を学ぶ。

まずは大事な定理から。

 

Th1.1

数列{a(n)}は以下の二つの条件を満たすとする。

(1)∀n∈Nについてa(n) <= a(n+1)

(2)あるM∈Rに対して任意のn∈Nでa(n) <= M

⇒{a(n)}はn →∞で収束し、その値lim(n→∞)a(n)はM以下である。

 

これはつまり「単調非減少で上に誘拐な数列は(有限な)極限値を持つ」ということ。

この定理の証明は§2で行う。

 

次に定義

 

Def1.2(単調性の定義)

(a)∀n∈N, a(n) < a(n+1)  : 単調増加

∀n∈N, a(n) <= a(n+1)   :単調非減少

∀n∈N, a(n) > a(n+1)   :単調減少

∀n∈N, a(n) >= a(n+1)   :単調非増加

 (b){a(n)}が上に有界(下に有界)であることを次のように定める。

「ある実数Mが存在し、任意のn∈Nについてa(n)<=M(a(n)>=M)」

 

Def1.3(収束、発散の定義)

(a)数列{a(n)}がn→∞の時ある実数αに収束するとは、「∀ε>0, ∃n(0)∈N, s.t. |a(n)-α| < ε (∀n >= n(0))」

(b)数列{a(n)}がn→∞の時+∞に発散するとは、「∀M>0, ∃n(0)∈N, s.t. a(n)>M(∀n>=n(0))」

 

ここで、∀nとは任意のnという意味であり、∃nというのはあるnという意味である。また、s.t.とはsuch thatのことであるので「∀ε>0, ∃n(0)∈N, s.t. |a(n)-α| < ε (∀n >= n(0))」は「任意のε>0に対して、任意のn>=n(0)で|a(n)-α| < ε を満たすようなn(0)∈Nが存在する」と解釈する。

 

では問題演習をしよう

問1 n→∞の時1/n→0を示せ

示すべきことは「∀ε>0, ∃n(0)∈N, s.t. |1/n| < ε(∀n>=n(0))」である。

n(0) = [1/ε]+1とすれば、|1/n| <= |1/n(0)| = |1/([1/ε]+1)| < ε (∀n>=n(0))

よって示された。([x]はxを超えない最大の整数を表す。つまりガウス記号)

 

問2 n→∞の時n^2→∞を示せ

示すべきことは「∀ε>0, ∃M>0, s.t. n^2 > M(∀n>=n(0))」である。

n(0) = [√M]+1とすれば、n^2 >= ([√M]+1)^2 > M (∀n>=n(0))

よって示された。

 

問3 n→∞の時n^(1/n)→1を示せ。

示すべきことは「∀ε>0, ∃n(0)∈N, s.t. |n^(1/n) - 1| < ε (∀n>=n(0))」である。

a(n) = n^(1/n)とおく。1 - ε < a(n) は∀n∈Nについて成り立つ。a(n) < 1 + ε の両辺をn乗すると、n < (1 + ε)^n。(1 + ε)^n >= {n(n-1)ε^2}/2なので、n < {n(n-1)ε^2}/2 であれば、n < (1 + ε)^nが満たされる。よってn(0)=[2/ε^2+1]+1とすれば十分。よって示された。

 

以上が§1の内容である。